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この冬のインフルエンザについて(2022-23)





現在、新型コロナウイルス感染症の第7波が猛威を振るっている状況であります。さらなる変異株のBA2.75(ケンタウロス)も注意が必要で 第8波も! なんて予想も出ています。

そんな状況に追い打ちをかけるのが、もしかしたら、今年は忘れていたインフルエンザの流行がくるかもしれないということです。

そこでもう一度、風邪、新型コロナ、インフルエンザについて整理しましょう。

 

やっぱり風邪はよくわからない?

ちまたでも「風邪」という言葉はよく使われます。新型コロナのパンデミックから、いつも以上に使われいるように感じます。でも改めて「風邪」ってどう意味かと聞かれると医療従事者でも正確に答えるのは難しいかと思います。

夏風邪、鼻風邪、おなかの風邪など、さらに風邪の変化版がありますので、もっとややこしくなります。

 

そこでシンプルに考えてもらうのが一番です。

風邪は病名ではありません。風邪症候群という言葉はありますが、症候群ということですので、同じ症状の色々な病気の集まりという言葉です。

 

①軽い症状

②重症化はあまりしない

③長期化しない

3条件がそろった状態であれば、特別な検査や特別な治療が必要としないので、この状態を「風邪」と表現します。自然に治るのを待ちましょう。

特別な検査や特別な治療が必要としないような状態であれば、様子を見て(風邪薬を飲みながら・・・)、治っていけば、風邪として良いということになります。もし、状況が変わるようであれば、検査の追加や治療の変更が必要となりかもしれません。

 

「風邪です ≠ コロナではないです」

 

ちゃんと病院で風邪を診断するとは・・・

まず、感染症を疑う かどうかになります。例えば、花粉症などのアレルギーなど、症状は同じでも感染症でない場合もあります。

「風邪か?アレルギーか?」と「風邪も、アレルギーも」

 

感染症を疑った場合には、

①感染源は?

②原因のウイルスや細菌は?

③炎症の程度は?

の3つを考えて、診断および治療をすることとなります。

上気道の感染症(狭い意味での風邪 20-21シーズンのインフルエンザ治療(インフルと新型コロナと風邪、アレルギーも) )の場合、

耳鼻咽喉科であれば、視診やファイバーなどで直接的に感染部位を診断することが出来ます。

その感染源から可能性の高い起炎菌やウイルスを考えて、治療を行います。場合によっては細菌検査でさらに詳しく診断をします。感染部位がはっきりしないと原因のウイルスや細菌が想定できないので、ウイルスに効果がない抗生物質などをなんとなしに使ってしまうことになります。

感染部位の状況、症状、レントゲン、血液検査などから炎症の程度判断し、治療計画を立てます。

 

副鼻腔炎や扁桃炎、肺炎などの「~~~炎」は感染によっておこった炎症部位を表す表現で、インフルエンザ、溶連菌、新型コロナなどの病名は原因のウイルスや起因菌を表したものになります。例えば、風邪のウイルスが副鼻腔という場所に炎症を起こせば、副鼻腔炎であり、発症の初期や軽ければ、「風邪」という意味と同じです。

「重症、新型コロナウイルス、肺炎」といったように程度、原因のウイルスや細菌、炎症部位の3つそろえば診断としては完ぺきになります。「軽症、RSウイルス、肺炎」などは症状が軽くて検査が必要にない場合は「風邪」となります。

 

問診や視診で検査の必要がなさそうであれば、「風邪」ということで、症状を緩和する薬(いわゆる風邪薬)を使いながら、自然に治っていくかを診ることとなります。予想通りに経過が進まなければ、治療計画の変更が必要となります。

 

大人の風邪と子どもの風邪は違う?

風邪はいろいろな病気の集合です。年齢によって含まれている病気が異なるということがポイントとなります。保育園や幼稚園ではたくさんの感染症の名前が出てきます。お母さんたちにとってはよくわからない病名が出てきます。保育園や幼稚園の先生たちもよく分かってないかもしれません。

新型コロナ(COVID-19)で踊らされた我々と同じようなことが、もっと前から保育園や幼稚園では起こっていたのです。この状況を整理するためにはやっぱり風邪という言葉を理解することが早道です。

 

①風邪はいろんな病気の集まり

②子どもと大人では風邪の範囲が違う

 

大人と子どもとの違いは、一言で言うと、免疫力の違いです。大人になると様々な感染症に対して免疫力が高くなります。そのために軽症ですむ場合が多くなります。また、薬も必要としない場合も多くなります。特別な治療や検査を必要とせずに1週間程度で治る場合は「風邪のくくり」に入ることとなります。

子供の方が病気の種類が多いのではなくて、大人の風邪の範囲の方が子供と比べて大きくなるのです。だから、大人は風邪と言っている病気が保育園や幼稚園では様々と出てきます。また、新型コロナでは「子どもの方が軽くすんで、大人の方が酷かった」といった場合がよく聞かれます。そういった意味でも新型コロナは風邪とは違っています。

軽症で、なおかつ、軽くすんだ場合の新型コロナであれば、風邪ということとなります。しかし、まだまだ新型コロナを風邪というには時間がかかりそうです。

 

新型コロナ(COVID-19)は風邪?

風邪と新型コロナ(COVID-19)の違いは何でしょうか?

①感染力

②重症化率https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000964409.pdf

③後遺症https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf16/kouisyou.html

 

症状的には風邪と新型コロナ(COVID-19)で区別できません。場合や人によっては最初は風邪よりも軽いかもしれません。「熱がないからと言ってコロナではない」とは言えません。無症状から軽い風邪症状、インフルエンザ様症状、明らかな重症の症状など様々な症状があるのが、新型コロナであり、また、「症状が改善したからコロナではない」とも言えないのが新型コロナ特徴ともいえます。

であれば、風邪と何が違うのでしょうか?

一つ目は感染力です。

実効産生回数などといった1人から何人の人に感染させるかといった指数はありますが、まだまだ、風邪と違って集団の免疫がない状態であれば、風邪よりもうつりやすいのは当たり前ですよね。風邪が罹ったり、重症化したり、しないのは十分な免疫があるときに限ってです。

二つ目は重症化の確立が高いことです。

オミクロン株になってからデルタ株と比べると、ずいぶんと重症化率が低くなりました。しかし、60歳未満でやっと風邪よりも重症化率の高いインフルエンザと同じで、60歳以上となると3倍以上の重症化率です。

まだまだ、すべての人をインフルエンザと同じように扱うことは難しそうです。また、今後の変異株次第では重症化率が高くなることもありうるかもしれません。

三つめは後遺症の問題です。

これもやはり、風邪とは違った問題です。後遺症は新型コロナの重症度と関係なく生じています。軽症の人でも後遺症が出る場合があります。しかし、新型コロナの後に起こった症状がすべて「新型コロナだから」ではないことにも注意が必要です。例えば、元々風邪をひくと咳が続きやすい人なら新型コロナでもそうかもしれません。そういった場合は「コロナだから」ではないかもしれません。

 

2022-23はインフルエンザも猛威を振るうかも?

例年、北半球のインフルエンザは同じ年の夏に先に流行った南半球の状況から予測されます。新型コロナの影響で世界的に2020年、2021年はインフルエンザの流行がありませんでした。しかし、2022年のオーストラリアでは例年より早く、多くのインフルエンザが認められいます。

 

新型コロナの感染症対策の影響で

①インフルエンザに対する免疫力が低下している

②感染症対策の意識が低下している

 

日本では例年、インフルエンザは12月ごろから流行し始めては年明けの1~2月が多いのです。しかし、新型コロナが出現した2020年の3月からのインフルエンザ発生数は例年と比べ物にならないぐらい少なかったのです。わしお耳鼻咽喉科でもほとんどゼロといってもいいぐらいの数でした。

 

では、2022-23年はどのようになるのでしょうか?

この2シーズンは例年よりインフルエンザ感染者数が少なかったので、個人、集団ともに免疫力が低下していることが予想されます。また、「withコロナ」が世界的も進んで、感染症対策も以前のようにはいかないことから、2022-23年シーズンのインフルエンザは以前のように、例年以上に、流行する可能性が指摘されています。

さらに、2009年に流行した新型インフルエンザ(今では新型ではありませんが・・・)の時は9月ごろから流行し始めて、ピークが11~12月でした。もしかしたら、今年もそんな感じで早くからインフルエンザが流行するかもしれません。(厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/000620809.pdf

風邪と比べてインフルエンザは、重症化しやすくて、感染力も強い、感染症です。新型コロナと同じように周りの状況をよく判断して、ワクチン接種などで重症化を予防しつつ、感染対策を個々で行いましょう。

https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=46

新型コロナの流行状況、インフルエンザの流行状況によっては、病院でも検査をうまく行うことができない状況になる場合も想定されます。新型コロナに関しても同じですが、検査や検査結果にばかりに意識が行ってしまいがちです。「かもしれないから、自分や周りの人に影響しないように行動しよう」が一番大切です。症状が軽いから(症状軽いインフルエンザや新型コロナはたくさんあります)、検査で陰性だから(100%の精度の検査はありません)、といってしまっては感染対策は意味がなくなってしまいます。

37度台の微熱でも危険?「かぜ」とインフルエンザについて

 

 

もしかしたら、これからはアレルギーが増えるかも?

感染症に対しての免疫力が低下すると、アレルギーの発症が多くなってくるかもしれません。アレルギー発症に関して、衛生仮説という考え方があります。簡単に言うと、寄生虫感染など、いろいろな感染症が少なくなってきたことによってアレルギーが増えてきたかもしれないという考え方です。

確かにアレルギーというのはウイルス、細菌、寄生虫などの異物に対する免疫機能が花粉やダニ、食べ物を異物と間違えて反応してしまうことを指します。ですから、アレルギー症状と風邪などの感染症と症状が似ているのです。

だとすれば、感染症とアレルギーには関連があって当然ともいえます。子どもなどでウイルスや細菌と接する機会が減少するとアレルギーが増加する、といった報告もあります。「withコロナ、postコロナ」の時期に入ったのならば、このような注意も必要ともいえるでしょう

わしお耳鼻咽喉科 院長  鷲尾 有司

地域の皆様に少しでも貢献したいという思いを抱き、2011年11月11日に「わしお耳鼻咽喉科」を開院。

アレルギー治療を得意とし、「最新の正しい医療情報を共有して一緒に考える医療の提供」「できるだけ薬に依存しない治療法の提案」「患者様の負担を減らすための各種日帰り手術の提供」をなどを進める。

子どもたちの未来のために、“まちのお医者さん”をめざしています。

わしお耳鼻咽喉科 TEL: 0798-56-8733 兵庫県西宮市瓦林町20-13
【診察】午前8:45~12:00 午後15:45~19:00【休診日】水曜と土曜の午後 日曜・祝日