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扁桃腺がはれている???





よく患者さんが「扁桃腺が腫れているみたいです」と受診されます。

この「扁桃腺がはれている」について説明しましょう。

 

扁桃腺はどこにあるの?

皆さんが扁桃腺と呼んでいる組織の正式名称は口蓋扁桃です。口を開いたときに、口蓋垂(俗に言う、のどちんこ)の両側に見えるふくらみがそうです。

実は扁桃腺ではなく、扁桃が正しい呼び名です。扁桃には口蓋扁桃のほかに、鼻の奥にある咽頭扁桃(アデノイド)、咽頭扁桃の両側にある耳管扁桃、舌の付け根にある舌扁桃などがあり、これらを合わせてワルダイエル咽頭輪と呼ばれています。

これらの扁桃組織は免疫機能を担ってる部位で、微生物侵入の関所となります。

 

本当に扁桃腺が腫れているの?

口蓋扁桃は元々、大きいサイズの人や普通のサイズでも口の中に突出している人がいます。これらは扁桃肥大といわれる状態です。

しかし、扁桃が肥大していることと腫れていることは別です。「腫れている」とは元々より大きくなっていることを指します。初めから大きい人は腫れていないことになりますし、大きいからと言って必ずしも腫れやすいわけでもありません。

ただし、多くは喉の調子が悪いときに基本に、自分で見るか、病院で診てもらうか、だと思います。となると、元々がわからない限り、自分でも病院(耳鼻咽喉科以外)でも腫れているかは判断しにくいかもしれません。耳鼻咽喉科は経験上、たくさんの口蓋扁桃を見てきていますので、判断することができます。もちろん全部ではないですが・・・

 

扁桃腺が腫れるのはすべて細菌のせい?

咽頭炎や喉頭炎よりも扁桃炎の原因には細菌が関係する比率が多くなります。反対に咽頭炎や喉頭炎の原因となる微生物は、ほとんどがウイルスのため抗生物質に期待はできないことなります。扁桃炎の原因となる微生物で注意が必要のものは溶血性連鎖球菌(通称 溶連菌)、アデノウイルス、もう一つEB(エプスタイン-バー)ウイルスです。咽頭炎・喉頭炎に比べると細菌性の可能性が高くなりますが、ウイルス性の場合もあり、抗生物質が効果を示しさないことが多々あります。

 

溶連菌による扁桃炎

溶連菌(溶血性連鎖球菌)と呼ばれる細菌による扁桃炎ですので、抗生物質が非常に効果的です。診断としては、インフルエンザなどと同様で、迅速簡易検査で行われることが一般的です。どんな人に溶連菌感染症を疑うでしょうか?溶連菌感染症診断の目安としてCentorの診断基準が使われることがあります。

 

ポイントは年齢と咳などの喉以外の症状が有るか?

①大人には少ない

②溶連菌性扁桃炎では咳や鼻症状は少ない

ということです。

 

溶連菌性咽頭炎・扁桃炎の診断は迅速簡易検査によるものが基本となります。ただし、溶連菌の場合はウイルスの簡易検査と異なって注意点があります。それは「陽性であっても必ず原因ではない」という点です。溶連菌は2~3割の人が保菌と言って、普段から共存している状態にある人がいるのです。ですので、症状・所見・検査結果など総合的に判断して診断する必要があることに注意が必要です。

溶連菌性扁桃炎の診断となれば、抗生剤による治療を行いましょう。

大人もかかる溶連菌の症状・検査・治療について

アデノウイルスによる扁桃炎

子供さんであれば、プール熱(咽頭結膜熱)と言われる病気で有名です。喉の症状だけでなく結膜炎が合併する病気で、感染力が強いのが特徴です。

アデノウイルスによる扁桃炎も迅速簡易検査で行います。溶連菌と違って、陽性となれば、アデノウイルスが原因となります。

治療は、残念ながら、アデノウイルスに有効な薬がありませんので、対症的に対応しながら、自己の免疫力による治癒を待ちます。

大人もかかるアデノウイルスの症状・治療について

EBウイルスによる扁桃炎(伝染性単核球症)

10・20歳代に多いとされる伝染性単核球症という病気です。原因となるウイルスにEBウイルスやサイトメガロウイルスなどがあります。キスや回し飲みなどで感染しやすく、潜伏期は50日ぐらいといわれています。

のどの痛み、発熱や頸部のリンパ節腫脹が特徴的であり、ほかの扁桃炎と症状からは区別が難しいかもしれません。診断はまず疑うことから始まります。抗生物質の効果がなさそうであれば、血液検査で伝染性単核球症の確定診断をします。EBウイルスの迅速簡易検査はありませんので血液検査が確定診断に必要です。ほかに肝機能の障害や脾腫などが生じることが多いので血液検査は必須となります。

ウイルス性の疾患ですので、アデノウイルスと同様に、有効な薬はなくて対症療法のみとなります。ただし、伝染性単核球症は少なくとも1~2週間は肝機能の状態を見ながら経過観察をする必要があります。

 

「扁桃腺がはれている」といっても、本当に腫れているの?、原因の菌やウイルスは何だろう?、などを考えながら、診断・治療することを覚えておきましょう。

 

わしお耳鼻咽喉科 院長  鷲尾 有司

地域の皆様に少しでも貢献したいという思いを抱き、2011年11月11日に「わしお耳鼻咽喉科」を開院。

アレルギー治療を得意とし、「最新の正しい医療情報を共有して一緒に考える医療の提供」「できるだけ薬に依存しない治療法の提案」「患者様の負担を減らすための各種日帰り手術の提供」をなどを進める。

子どもたちの未来のために、“まちのお医者さん”をめざしています。

わしお耳鼻咽喉科 TEL: 0798-56-8733 兵庫県西宮市瓦林町20-13
【診察】午前8:45~12:00 午後15:45~19:00【休診日】水曜と土曜の午後 日曜・祝日