もう一度、コロナの検査を整理しましょう
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11月になって新型コロの感染状況は落ち着いていましたが、最近になって新しい変異株であるオミクロン株が出てきて少しずつ雲行きが怪しくなってきました。デルタ株に比べて重症化しないかもしれないという情報もありますが、感染力はオミクロン株の方が高いようですので、感染者が多くなれば必然的に重症者数は増える形になります。ですので、まだまだしっかりした感染対策と検査が必要です。
そこで、もう一度新型コロナウイルスの診断と検査についておさらいしましょう
コロナの診断は検査(PCR・抗原)・症状・感染状況が3本柱
他の病気の診断でも同じで、コロナ診断の基本はPCR検査ですが検査結果と症状および周辺の感染状況を踏まえて総合的に判断します。これはインフルエンザの診断でも同じことが言えます(インフルエンザ検査の活用法)
検査結果のみを鵜呑みにすると間違ってしまうことになるかもしれません。診断精度を上げるために、検査結果だけではなく症状および感染状況を踏まえて
総合的に判断することが必要です。そのためにも風邪症状(コロナウイルスで分かっていること(2020/5/6))がある場合は、コロナ検査の可能な医療機関に受診することをおススメいたします。この2年間でわかっていることは新型コロナウイルス感染症を症状のみで診断することは難しいということです。
コロナの検査についての注意点
①「PCR検査は100%ではない」
残念ながら制度が100%の検査はありません。新型コロナのPCR検査でも同じです。あくまでも「かかっているか?」を調べる検査であり、「かかっていないか?」を調べる検査ではありません。ですので、新型コロナに罹っていないということを検査でいうためには症状と周りの感染状況を踏まえて総合的に判断します。
②検査の種類で精度が異なる
PCR検査は新型コロナウイルスの遺伝子を増幅させて検査をします。ごくわずかでも採取できれば陽性になる確率が高い検査です。そういう意味で最も精度が高い検査と言えます。反対に精度が高いために、ウイルスの死骸などにも反応してしまい、感染力がない状況でも陽性となってしまう場合があります。そのため、今では新型コロナウイルスに感染して重症化してなければ、7~10日で感染力はなくなると判断し、治癒判定のために基本的にはPCR検査を行いません。
一方、抗原検査は新型コロナウイルスに含まれる一部のたんぱく質を確認する方法です。PCR検査のように増幅するわけではないので検査感度が低くなってしまいます。インフルエンザと同時にできるキットなどもあり短時間で出来るので利便性は高い検査になります。
わしお耳鼻咽喉科ではID NOWというPCR検査を用いて院内でPCR検査を行っております。早ければ30分以内に検査結果が出る機器でありますので、可能な限り早く検査結果をお伝えできるとように対応しております。
③検体採取方法で精度が異なる
検体採取の方法に鼻咽腔採取、鼻腔採取、唾液採取の3つの方法があります。
鼻咽腔採取というのは綿棒を鼻の奥まで入れて検体を採取する方法です。最も精度が高い採取方法になります。しかし、欠点として①自分ではできない、②医療者への感染リスク、③痛みを伴うこともある、があげられます。
鼻腔採取は鼻の入口より採取する方法で自分で行うことができ、痛みのほとんどない方法になります。鼻咽腔採取より精度が落ちる採取方法となります。
唾液採取はその名の通りに唾液を集めたものを検体として採用する方法です。最も簡便な方法ではありますが、正確にするには最も難しい方法ともいえます。
採取方法で精度が異なることを前提に可能であれば最も精度の高い鼻咽腔採取から対応するようにしましょう。
わしお耳鼻咽喉科は耳鼻咽喉科ですので、最も精度の高い鼻咽腔採取を原則として、状況に応じて鼻腔採取を行っております。唾液採取は現在のところは行っておりません。
新型コロナの検査をするのであれば、まずは鼻咽腔採取によるPCR検査を考えましょう。
④自費のPCR検査・抗原検査は無症状の人に
自費PCR検査や自費抗原検査は病院での検査とは異なり、無料になっても、無症状でかつ濃厚接触者にあたらない人のための検査です。もし、陽性であればもう一度医療機関で検査が必要になります。
当院でも風邪症状などの自覚症状がある人が薬局などでの抗原検査や自費PCR検査をしてから来られることがあります。新型コロナを疑う症状があれば、保険適応のPCR(抗原)検査になります。また、症状がある場合は検査結果の判断が難しい場合がありますので、出来ればPCR検査のできるクリニック・病院を受診しましょう。ただし、まず医療機関に連絡をしてから受診対応の指示をもらうようにして下さい。
もう一つのコロナ検査、抗体検査は参考程度
コロナの検査に抗体検査というものがあります。抗原検査と似ているので間違いやすいのですが、この検査はウイルスを検査するものではなくて人の免疫状態を調べるものです。ただし、免疫というのは多くの要素で成り立っているので抗体がすべていうことではありません。あくまでも抗体は免疫の一部です。
したがって、抗体がないことが免疫がないという意味にはなりません。「ワクチンを打ったけど抗体が下がってきた」ということは免疫がなくなったわけではありません。もちろん有効な抗体が多くある方がより高い免疫があるということではありますが。
どの程度の抗体量があれば、感染予防になるのか?、発症予防になるのか?、重症化予防になるのか? ははっきりとはしていません。そういう意味では抗体検査をすることは今のところ研究段階であり、参考程度にしておくのが妥当といえるでしょう。
やっぱり、引き続き感染対策をしましょう
新型コロナウイルス感染症のインフルエンザや風邪との違いはインフルエンザや風邪は小児(乳幼児)の方がリスクが高い病気ですが、COVID-19は大人の方がリスクの高い病気であるということです。どうしても子どもの方が弱いという先入観を持ってしまいがちですが、実はお父さん、お母さんの方がリスクが高いということを忘れてはいけません。もちろん、高齢者はどちらもリスクが高く注意が必要です。(感染予防対策《マスク・消毒・手洗いについて》)
コロナを疑う症状があったり、風邪症状のある人と接触したり、するようであれば接触的に検査をしましょう。また、風邪などで看病を必要なお子さんがいらっしゃる場合もできるだけ、お子さんの検査を行う方が良いでしょう。(わしお耳鼻咽喉科 ~発熱検査外来情報~)
この記事を書いた人
わしお耳鼻咽喉科 院長 鷲尾 有司
地域の皆様に少しでも貢献したいという思いを抱き、2011年11月11日に「わしお耳鼻咽喉科」を開院。
アレルギー治療を得意とし、「最新の正しい医療情報を共有して一緒に考える医療の提供」「できるだけ薬に依存しない治療法の提案」「患者様の負担を減らすための各種日帰り手術の提供」をなどを進める。
子どもたちの未来のために、“まちのお医者さん”をめざしています。