5歳からできるスギ花粉症の舌下免疫療法って知っていますか?
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やっと、スギ・ヒノキ花粉が過ぎ去って、花粉症から解放された方も多い時期になりました。
まだ、鼻炎症状や目のかゆみが続く方は、スギ・ヒノキの花粉以外に反応しているかもしれませんね。まだの方は検査で調べてみてはいかがでしょうか?
ところで、免疫療法って知っていますか?
免疫療法は現在、アレルギーを治すことが出来る唯一の方法と言われている治療です。
アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量ずつ体内に取り込んで、アレルギー反応が起きにくい体にする治療です。
TVなどで食物アレルギーの子どもさんに牛乳を少しずつ飲ませて克服するといったニュースを見たことがありませんか?
これは経口免疫療法と言われる治療法です。
この治療の元になった治療法と言われるのがダニアレルギーやスギ花粉症に対する皮下免疫療法です。
実はこの皮下免疫療法、50年以上前の1963年から日本で行われている治療法なのです。ちなみに世界で一番最初に行われたのは100年以上さかのぼって1911年なのです。
しかし、その後、簡便で即効性のある抗アレルギー薬がたくさんの種類で出てくるようになって来ました。抗アレルギー薬などの利便性中心の治療になってしまいました。その結果、治癒の望める唯一の治療である皮下免疫療法を行っている病院・クリニックがさらに少なくなってしまい、どこでも受けられる治療ではない状況になったのです。
(もちろん、当院では皮下免疫療法を行っています)
そこで多くの病院・クリニックで行えるようにと出来た治療法が舌下免疫療法になります。
スギ花粉舌下免疫療法薬(シダトレン)
まず最初に2014年の10月よりスギ花粉症に対する治療薬であるシダトレンが使用可能になりました。
シダトレンは液体の薬を液体を舌の裏に滴下して行います。始めの2週間は増量期で、スプレー式の薬剤になります。
その後、垂らすタイプのパック式を継続いします。ただし12歳以上が対象になる薬剤です。
新しいスギ花粉舌下錠(シダキュア)が出てきたために、シダトレンは2021年3月31日で販売終了となります。当院でもシダトレンで治療されている方は随時、シダキュアに変更しています。
ダニアレルギー舌下免疫療法薬(アシテア、ミティキュア)
次に、ダニによる通年性アレルギー性鼻炎の治療薬であるアシテア、ミティキュアが2015年11月及び12月に使用可能になりました。こちらも使用開始時では適応年齢が12歳以上でありました。
この錠剤はミティキュアの見本になります。スグに砕けて溶けてしまう錠剤なので舌の裏にずっと残ることはありません。
黄色の3300(JAU)を1週間使用してから、10000(JAU)に増量して継続します。
このダニ舌下免疫療法薬も本年2018年の2月より12歳以上という年齢制限がなくなりました。
理屈上は何歳からでも使用可能になりましたが、WHOの指針から免疫療法の推奨年齢が5歳以上でもあり、当院では5歳以上の方を対象としております。
スギ花粉症舌下免疫療法薬(シダキュア)
さらに2018年6月29日に年齢制限のないスギ舌下免疫療法薬であるシダキュアが認可されました。
上記の写真のような錠剤型の治療薬です。
ミティキュア(ダニ製剤)と同様に2000(JAU)を1週間使用してから5000(JAU)に増量して、5000(JAU)を継続します。
こちらも5歳以上のスギ花粉症の方が適応になります。
今までは新薬ということもあり、発売後の投与制限のために2週間までしか投与できませんでしたが、2019年5月1日よりほかの薬と同様に2週間以上の投与が可能になりました。
また、シダトレンと比べても舌下に保持する時間が2分から1分に短縮されたこと、冷所保存の必要がなくなったこと、で使い勝手がよくなりました。さらに維持期の抗原量が2000(JAU)から5000(JAU)に増量されたことからより高い効果が期待できます。
ダニアレルギー、スギ花粉症の治療早見表
今までは12歳以上の中学生が対象であった舌下免疫療法という選択肢が5歳以上の小学生にも増えました。
選択肢が増えると「どの治療法を選んだらいいのか」が迷いますよね。当院での治療早見表を参考にしてみてください。
皮下免疫療法 VS 舌下免疫療法
また、皮下免疫療法と舌下免疫療法のちがいの早見表も参考にしてみてください。
大まかに言いますと「病院で行う治療が皮下免疫療法」で「家で行う治療が舌下免疫療法」です。
通院頻度の点からすると「はじめは頻繁に病院に行かなくてはならない皮下免疫療法」と「皮下免疫療法ほど最初は通院しなくてよい舌下免疫療法」、自宅での治療という点からすると「家では何もしなくてよい皮下免疫療法」、「家で毎日しなくてはならない舌下免疫療法」とも言えるかもしれません。
当院では皮下免疫療法も舌下免疫療法もどちらも行っております。
それぞれに特長がある治療になります。どちらの治療が良いということはありません。少なくとも3~5年は継続する治療ですので、自分にとって続けやすい治療を相談して決めていきましょう!
この記事を書いた人
わしお耳鼻咽喉科 院長 鷲尾 有司
地域の皆様に少しでも貢献したいという思いを抱き、2011年11月11日に「わしお耳鼻咽喉科」を開院。
アレルギー治療を得意とし、「最新の正しい医療情報を共有して一緒に考える医療の提供」「できるだけ薬に依存しない治療法の提案」「患者様の負担を減らすための各種日帰り手術の提供」をなどを進める。
子どもたちの未来のために、“まちのお医者さん”をめざしています。