スギ花粉のピークと新しい花粉症の薬~ゾレア~
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花粉症の方はもうすでに症状が出始めたという方が多くなってきたのではないでしょうか?当院でも花粉症の治療で受診される方が多くなってきました。まだ症状が出ていない花粉症の方もこれからが飛散の本番になるので、「今年こそは大丈夫」と期待せずに、今のうちから治療を開始しましょう。
ところで、スギ花粉のピークはいつ頃なのでしょうか?
スギ花粉のピークは3月上旬
花粉情報協会(http://pollen-net.com/)によりますと、2020年の西宮市における花粉初観測日は1月17日で飛散開始日は2月3日でした。例年に比べると、暖冬の影響か、かなり早い飛散開始日となりました。西宮市におけるスギ花粉情報を西宮市環境衛生課に提供して頂きました花粉飛散量情報のグラフから見てみますと、もちろん年によっての飛散時期や飛散量のバラツキはありますが、3月上旬にピークが多い傾向にあるようです。このグラフからでも、飛散開始が早くなっても飛散終了が早くなるわけではないようですので、やはり4月上旬までは注意しておきましょう。さらにヒノキ花粉症がある人はもう1か月は延長して治療が必要になります。
新しい花粉症治療薬 〜ゾレア〜
花粉症に対して、気管支喘息や慢性蕁麻疹の治療薬である抗IgE抗体のゾレア(オマリズマブ)が花粉症治療薬として新しく承認されました。今までの花粉症の薬とは異なる、抗体製剤といわれる薬剤です。この薬は使用にあたり、大きく2つの条件があります。
①12歳以上(体重が20~150kg)の「重症」花粉症の方
②既存の内服薬や点鼻薬で十分な効果が得られないの方
誰でも使える薬ではなく、かなり制限された方に使用することになります。ではどんな人が具体的には使用対象になるのでしょうか?
重症花粉症とは
花粉症などのアレルギー性鼻炎には重症度の分類があります。くしゃみ回数、擤(こう)鼻回数、鼻閉程度によって軽症から最重症までの4段階で分類されています。擤鼻回数とは鼻をかむ回数で1日に11回以上鼻をかむ人が重症以上になります。この花粉症症状の中で一つでも重症以上の症状があれば、重症花粉症ということになります。花粉症の方でこの基準にあてはまる方はたくさんいるかと思います。
今までの治療で十分な効果がない人とは
重症以上の花粉症の方に、「もう一度」、1週間は抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などで治療します。それでも効果が不十分で重症もしくは最重症の状態の人が治療の対象となります。
「今まで薬が効かなかったです」ではなくて、再度、薬で治療してみて効果が不十分であった人が対象となります。
血液検査でも条件があります
①スギ花粉特異的IgE抗体がクラス3以上
②「ゾレア投与前」の総IgE値が30~1500IU/mlの範囲にある
これらの条件もクリアする必要があります。
ゾレアは自己負担額が高額になる可能性があります
もう一つ、ゾレアには治療費が高額になる可能性があるという点も気にしなくてはなりません。投与量が人によって異なるために、自己負担額がいくらになるかは個人差があります。どれくらいになるかの目安はゾレアのHP(https://hajimete-xolair.jp/)を参考にしてみて下さい
いろいろな制約があるゾレアですが、花粉症の治療に選択肢が一つ増えたということですので、花粉症で困っている方にとってはありがたい話ですね。当院ではゾレアも含めて、花粉症治療に対する多くの選択肢を持っております。ご相談しながら、短期的だけではなくて長期的な治療も含めて、より良い治療を目標にしております。
また、今シーズンの花粉症は新型コロナウイルス感染症などでマスクが手に入りにくい状況が考えられます。例年以上に治療計画をしっかり立てて、快適な春を過ごせるようにしましょう。
この記事を書いた人
わしお耳鼻咽喉科 院長 鷲尾 有司
地域の皆様に少しでも貢献したいという思いを抱き、2011年11月11日に「わしお耳鼻咽喉科」を開院。
アレルギー治療を得意とし、「最新の正しい医療情報を共有して一緒に考える医療の提供」「できるだけ薬に依存しない治療法の提案」「患者様の負担を減らすための各種日帰り手術の提供」をなどを進める。
子どもたちの未来のために、“まちのお医者さん”をめざしています。