アレルゲン免疫療法とは?
アレルギーの原因物質(アレルゲン)のエキスを少しずつ投与していくことによってアレルギーを起こしにくい体にしていく治療法です。いわゆる予防接種は、免疫を獲得するためのものですが、この治療法は勘違いで獲得してしまった免疫をなくすために投与するので、普通の予防接種と異なり、3年~5年という長期間の投与が必要となりますが、治癒が期待できる治療法です。現在では投与方法が違う「皮下免疫療法」と「舌下免疫療法」の2種類の免疫療法があります。
アレルゲン免疫療法の効果期待度
アレルゲン免疫療法は、治癒または長期寛解(症状がない状態)ができる療法です。これはお薬やレーザー療法では望めない効果です。ただし、現在のところの有効率は70~80%で、お薬やレーザー治療と同程度となります。
アレルゲン免疫療法のメリット
治癒または長期寛解(症状がない状態)が期待できる
これはお薬やレーザー治療では望めない効果です。ただし、現在のところの有効率は70~80%で、お薬やレーザー治療と同程度となります。
新たな抗体獲得を予防する効果
アレルギーがある人はそのアレルギーの種類が増えていくことがよくあります(例えば、ダニアレルギーの人にスギ花粉症が合併するなど)。免疫療法には、抗体の種類増加を抑える効果が認められてます。
アレルギーの進展を予防する効果
アレルギー性鼻炎がある人は、気管支ぜんそくやアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患に症状が進展すること(アレルギーマーチ)もよく見られます。免疫療法には他のアレルギー疾患への進展を抑える効果が認められています。
アレルゲン免疫療法のデメリット
通院回数が多い
免疫療法はごくごく薄い濃度からはじまり、維持量といわれる治療効果を最大に発揮する濃度まで徐々に増量していきます。維持量に到達するのに4~5ヶ月かかります。それまでは皮下免疫療法の場合で約1週間に1回の通院が必要となります。維持量に到達すれば通院間隔は、2週間→3週間→1ヶ月→1.5ヶ月→2ヶ月の順で期間が延びていくので、最終的には楽になります。ただし、最低でも全体で3~5年の継続が必要です。
治療エキスの種類が少ない
現在のところ有効率が70~80%認められる治療エキスは、ダニエキスとスギ花粉エキスしかなく、これ以外のアレルギーには効果がありません。しかし、アレルギーの中心であるダニと花粉症の中で最も多くて症状もひどいスギ・ヒノキ花粉症を治療することは、他のアレルギ-にとっても大切です。
全身反応がでる可能性
アレルギーの原因を投与する治療である免疫療法では全身に反応が出る可能性があります。具体的にはぜんそく発作、じんましんがほとんどです。その可能性は皮下免疫療法の場合、注射1000~5000回あたり1回程度の頻度です(より強い症状であるアナフィラキシーショックはさらに低い確率です)。全身反応のほとんどが注射後20~30分以内に起こることが解っていますので、当院では注射後20分は院内で過ごしていただき、問題なければ帰宅していただくようにしています。もし、全身反応が認められれば直ちにその場で適切な処置を行います。ほとんどの場合は1時間程度で回復し、後遺症を残すこともありません。
アレルゲン免疫療法の種類
皮下免疫療法
皮下に
注射して
投与
メリット
- 通院するだけで、毎日欠かさずお薬を飲んだりしない
- 通院の間隔を徐々に延ばすことができる(最長2~3ヶ月に1回)
- ダニ・スギの同時治療が可能
- 長い目で見てトータルの医療コストを削減できる(※1)
デメリット
- はじめのうちは通院回数が多い
- 注射での投与である(痛みを最小限に抑える細い針を使用)
- くまれ(注射数千回に1回の確率)にではあるが全身反応が起こる
(※1) 注射の間隔を徐々に延ばしていくこと(最長2~3ヶ月に1回)ができるので、根治を望めないお薬やレーザー治療と違って長い目で見るとトータルの医療費を削減できます。
また、皮下免疫療法のみの医療費は1回あたり約600円(3割負担の場合)ですので、他の治療と比べて安価です。
舌下免疫療法
舌の裏に
薬を垂らして
投与
メリット
- 2~4週間に1回の通院で済む(自宅でできる)
- 注射の必要がない
- 全身反応の確率が低い
デメリット
- 毎日、自宅で服用しなければならない
- 治療間隔を延長できない
- 今のところ、ダニ・スギ併用を推奨されていない
※12歳以上のダニアレルギー性鼻炎・スギ花粉症に対して「舌下免疫 療法」の保険適応が認められましたが、12歳未満のお子様には適応 になりません。
皮下免疫療法に対する当院の体制
現在、「皮下免疫療法は副作用がある」「舌下免疫療法は自宅で薬を飲むだけ」という理由から「舌下免疫療法」がすぐれている という情報が少なくありません。
しかしながら、数年にわたり毎日欠かさずお薬を飲み続けることはとても大変なことです。
また「皮下免疫療法」の副反応は注射後20分程度で現れることから、当院では注射後20分は院内で待機していただき、万一の場合でもすぐに対処できる体制を整えています。